かつてはお正月やひな祭りに飲むイメージが強かった甘酒ですが、健康食品としてブームの今、一年中見かけるものになりましたね。
「甘酒はおいしい」という声もあれば「クセが強すぎる」という声、「アルコールが入っているから子どもにはダメ」という人もいれば「いや、アルコールは入っていない」という人もおり、評価や情報はさまざま。
これはどうしてでしょうか?
甘酒には2種類ある
実は、甘酒には種類が2つあります。
そして、その種類によって製法も味もまったく違うのです。
米麹甘酒 | 酒粕甘酒 | |
原料 | 米麹 | 酒粕 |
アルコール | 含まない | 少量含む |
砂糖 | 入っていないが甘味がある | 入っている |
特徴 | ブドウ糖や必須アミノ酸、オリゴ糖などを含み、”飲む点滴”と呼ばれている。 | 独特の風味がある。ダイエットに役立つレジスタントプロテインが多い。 |
現在の甘酒ブームの火付け役になったのは、米麹甘酒のほうになります。 今回はこの米麹甘酒について、メリットとデメリットを見ていきましょう。
米麹甘酒が「飲む点滴」といわれる理由
米麹甘酒を作るにはまず、蒸した米に麹菌を繁殖、発酵させて米麹を作ります。
その後この米麹に湯を加え、発酵させることで完成します。
米麹から作られる甘酒を飲むと”甘い”と感じるはずですが、この甘みは砂糖の甘みではありません。
麹菌が米に含まれるでんぷんを分解したことによってできるブドウ糖の甘さによるものです。
ご飯をよく噛んで食べると甘みを感じますよね?
これと同じことが麹菌によって作り出されているのです。
米麹甘酒にはこのブドウ糖が多く含まれ、すばやく体のエネルギー源になることから「飲む点滴」と呼ばれるようになったといわれています。
つまり、疲れたときにエナジーチャージができる栄養ドリンクのようなものといえるでしょう。
実際、江戸時代には夏バテ予防としても飲まれていたそうです。
またブドウ糖のほか、おもに以下のような成分が含まれるのが特徴です。
1)ブドウ糖
人が活動するためのエネルギー源となる。
2)アミノ酸
米麹甘酒には、食事からとる必要のある必須アミノ酸がすべて含まれる。
3)オリゴ糖
腸の善玉菌のエサになり、腸内環境を高める。
4)ビタミンB群
糖質や脂質などの分解を助けたり、体の調子をととのえる。
「甘酒には美容効果がある」ともいわれますが、オリゴ糖やビタミンB群などは美肌にも関係する成分になります。
米麹甘酒の落とし穴
スーパーフードともいわれる米麹甘酒。
たしかに健康や美容に役立つ食品ではありますが、だからといって一度にたくさん飲んでしまうとデメリットも出てきます。
米麹甘酒の栄養ポイントは、良くも悪くも”ブドウ糖”。
ブドウ糖はすばやくエネルギーになる反面、とり過ぎると血糖値を急激に上げてしまいます。
血糖値の急上昇は体脂肪をため込む原因になるため、ダイエット中の方やメタボの方などは飲みすぎないほうがよいでしょう。
また、血糖値が高めの方や妊娠中の方などにとっては、とり過ぎると糖尿病や妊娠糖尿病のリスクになるおそれがあります。
米麹甘酒とコーラを比べると、糖質は米麹甘酒が17.9g、コーラが11.4g(100g当たり)。
なんと、コーラよりも甘酒の方が糖質が多いのです。
いくら体に良いからといって、ゴクゴクと飲みすぎることのないようにしましょう。
甘酒を賢く取り入れるコツ
米麹甘酒は、麹の作用によってでんぷんがブドウ糖に、たんぱく質がアミノ酸に変化しています。
ブドウ糖やアミノ酸が多いということは、甘みや旨味が多いということ。
つまり、砂糖やみりんの代わりに”調味料”として使うと、料理がおいしくなるのです。
しかも一度に使う量は少量なので、血糖値を急激に上げる心配もなく、オリゴ糖なども取り入れられ、一石二鳥!
スムージーやヨーグルトに使うのはもちろん、たとえば卵焼きの砂糖代わりに、醤油と合わせて肉や魚の照り焼きになど、普段の料理にも活用できます。
また、フレンチトーストやトマト煮込みの隠し味、ドレッシングなどの洋風メニューにも相性抜群。
飲んでよし、調味料としてもよし、なのが米麹甘酒です。
まとめ
米麹甘酒は、ブドウ糖や必須アミノ酸、オリゴ糖などの成分が豊富な健康食品。
ただしブドウ糖が多いため、すばやくエナジーチャージができる反面、とり過ぎると血糖値が急に上がり、太りやすくなるという面も。
そこで、米麹甘酒の成分を健康的に取り入れるために、砂糖代わりとして調味料使いするのもひとつの手です。
甘酒の成分を取り入れながらも血糖値上昇の心配が少ないので、一石二鳥の使い方になりますよ。
・日本食品標準成分表2015年版(七訂)
参考
sazukaru代表。管理栄養士。 39歳で体外受精を経験し、40歳で第一子を出産。自身の経験から、不妊治療をされている方に向けた「授かるごはん」講座を主宰する。 人気サイト「服部幸應先生の1週間ダイエットレシピ」の監修経歴をもち、現在は雑誌やサイトの栄養監修なども手掛ける。