今年の夏は例年以上の暑さでしたね。室内と屋外の寒暖差などで夏バテは起こるので、残暑が厳しい9月も夏バテ予防は大切になります。 そこで精をつけようと、ウナギを食事に取り入れる方もいらっしゃるでしょう。
ウナギはいわずと知れた栄養満点食材。ところが、二ホンウナギを取り巻く現状は厳しいものがあります。
今回は、ウナギの栄養と現状についてみてみましょう。

ウナギと夏バテ予防

夏バテ予防にウナギを食べる習慣ができたのは、暑い夏に売れないウナギ屋を助けるべく、かの有名な発明家、平賀源内がウナギ屋の店先に「本日土用の丑の日」と看板を立て、人を集めたからだといわれています。丑の日に「う」のつくものを食べると夏バテしないという風習を利用したのです。

実際、この風習、つまり栄養補給にウナギを食べることは理にかなっています。 暑いとさっぱりとしたものを求めがちですが、それだとたんぱく質やビタミン、ミネラルが不足することがあります。

その点、ウナギ(蒲焼き)にはたんぱく質が100gに23gと豊富に含まれています。 また免疫力を高めるビタミンDを筆頭にビタミンAやE、ビタミンB群も多いうえ、カルシウムなどのミネラルも多く含まれます。そして脂の多いウナギですが、脂の質が高いのがポイント。コレステロールを下げるオメガ3脂肪酸やオリーブ油に多いオレイン酸が豊富です。

さらに皮のヌメヌメ成分であるムコ多糖類には、弱った胃腸の粘膜を保護し、消化吸収を助ける働きも。

夏バテ予防だけでなく、普段の栄養補給としてもウナギは優秀な食材になります。

ウナギは絶滅危惧種なのに食べてもいい?

土用丑の日には多くの人がウナギを食べる習慣があります。スーパーやチェーン展開をしている牛丼屋などでは安くウナギを食べることもできますよね。
このような様子をみると、ウナギは絶滅が危惧されている生き物とは思えないかもしれません。ですが、二ホンウナギは漁獲量が急激に減少しており、絶滅危惧種に区分されています。

ただ、食べることは禁止されていません。
でも、二ホンウナギが自然の中で増えるスピードよりも人間が食べるスピードが上回っていることが問題になっています。

「ウナギを養殖すればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、養殖ウナギは野生のシラスウナギを川や海で獲り、育てているのです。また、ウナギに卵を産ませるところから始める完全養殖は、まだ実用化には遠いようです。

 

■どうすればウナギは増える?

二ホンウナギの漁獲量が減少していても、中国産や台湾産などを食べられるから大丈夫だと思われるかもしれません。
でも、どの国でとれるウナギも全て同一種です。二ホンウナギに限った問題ではありません。

現在のところ、ウナギを増やすためには、野生のウナギが育つことのできる川や海の環境を取り戻すこと、そして人間が食べるスピードをゆるめることが必要だとされています。
ただ、食べるのをやめるということではなく、ウナギの食文化を守るために、私たちはウナギが想像よりも危機的な状況におかれていることをまず知っておく必要があるでしょう。

まとめ

日本人は土用丑の日にウナギを食べたり、精をつけようとウナギを食べたりします。実際、夏バテ予防に栄養豊富なウナギを食べることは、栄養補給に役立ちます。

ただ、二ホンウナギは絶滅危惧種に区分されています。食べることは禁止されていませんが、人間が食べるスピードが上回っていることが問題になっています。
ウナギを食べる文化を守るため、私たちはウナギが想像よりも危機的な状況におかれていることを知っておきましょう。

 

・日本食品標準成分表2020年版(八訂)

・旬の食材蘊蓄 うなぎ(イートスマート)

・絶滅危惧種の二ホンウナギ(朝日小学生新聞 2022年7月23日)

参考


 

管理栄養士
長 有里子

sazukaru代表。管理栄養士。 39歳で体外受精を経験し、40歳で第一子を出産。自身の経験から、不妊治療をされている方に向けた「授かるごはん」講座を主宰する。 人気サイト「服部幸應先生の1週間ダイエットレシピ」の監修経歴をもち、現在は雑誌やサイトの栄養監修なども手掛ける。

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